暗闇のなかの戦い(一)
朧月夜
ヨランは、すぐさま、この地下室の燭台に向かって矢を放った。
ぱちん、ぱちんという音を立てて、燭台は破壊されていく。
しかし、視界を奪われたのは、味方だけではなかった。
「おのれ、ガージェス。俺は、お前を決して許すことはないぞ!」
暗闇のなかで、アイソニアの騎士は辺りを伺った。
ドワーフであるヨランは、周囲の暗闇にも敏感に反応した。
アイソニアの騎士とガージェスとは、一マルテほどの距離だったろう。
もしも夜目が効くのであれば、容易に射止められる距離である。
しかし、アイソニアの騎士はふいに訪れた暗闇に、逡巡していた。
(ヨラン、これはやり過ぎだ。盗賊風情に、戦術は理解できんか……)
アイソニアの騎士は、必死で目をこらす。
そしてヨランの傍らには、縛めから解かれたイリアスの姿があった。
暗闇のなかのかすかな光のなかで、アイソニアの騎士はそれを確認する。
(よし、あとは敵を仕留めるだけなのだな?)アイソニアの騎士は決意を固めた。
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クールラントの詩