ガージェス・ノルディア(四)
朧月夜
「それは出来ません。彼女は大事な人質、いいえ、交渉の緒です。
あなたから、最善の道を引き出すためのね」ガージェスの口は滑らかだった。
「わたしはあなたに一つの提案があります。これは、
わたしの雇い主の意向とは異なるものですが……」
「お前の雇い主は、祭祀クーラスだな?」アイソニアの騎士が尋ねる。
「そうでございます。いいえ、そうでございました。
しかし、今のわたしには、新しい考えがあるのです。騎士殿」
アイソニアの騎士は、歯噛みした。これは、余計面倒なことになるのではないか……
「アイソニアの騎士殿。わたしは、あなたにこの世界の王となってほしい。
もし、それが叶わないとなれば、元の依頼人である、祭祀クーラスに従うのみです」
「この世界の王だと? 大それたことを言う奴だな、お前は」アイソニアの騎士が笑う。
「そうとも言いきれませんでしょう。あなたの武勇、そしてカリスマを持ってすれば、
世界を統べることなど、容易いのではありませんか? あなたの前に立ちはだかっているのは、
祭祀クーラス、ただ一人なのです」ガージェスは、自分の考えを滔々と述べた。
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クールラントの詩