ガージェス・ノルディア(二)
朧月夜

時刻は、イェルバの時を回っていた。
街は、薄闇のなかに包まれている。密談には適した時間である。
アイソニアの騎士は、ヨランだけを連れて行くことにし、
ハザック・アザンに対しては、屋敷で待機をするように命じた。

ハザック・アザンは、今ではアイソニアの騎士の忠臣である。
祭祀クーラス、そしてクールラントとの関係はぷつりと断たれていた。
「お気を付けくださいませ、騎士様」ハザックのその口調は、
かつてアースランテにアイソニアの騎士を誘ったときとは、違っていた。

アイソニアの騎士が、今ではアースランテの千人隊長となっていること、
そして、アースランテが各国の統治によって分断されてしまったことが、
彼の姿勢を少なからず、変えていた。

ハザック・アザンは、陰謀というものの何たるかを知っていた。
しかし、今回は影なる考えを持とうとはしていなかった。
彼のこれまでの人生は後ろ暗いものであった。が、今では違う。


自由詩 ガージェス・ノルディア(二) Copyright 朧月夜 2022-12-09 07:18:16
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クールラントの詩