囚われたイリアス(二)
朧月夜
ガージェスは、イリアス・ナディの面前に来て、言った。
「お目覚めですかな? イリアス・ナディ嬢。いや、
こう言ったほうが良いでしょうか? イリアス・ガ・ラ・ハルデン」
「あなたは誰なの?」イリアスが不信気に尋ねる。
「単なる誘拐魔ですよ。あなたの身に危害を加えることは、ありません」
「これが危害でなくて、何なのです?」
「これは、一つのビジネスです。人と人とを取引する」
ガージェスは、不遜極まりない態度で、そう言ってみせた。
「わたしに人質の価値はありません。わたしは、一介の庶人です」
「そう思っているのは、あなただけでしょう。
あなたは、ライランテ大陸の今後も左右する、貴重な人質です」
「あなたはずいぶんと高慢なのですね。誘拐の駒にされるくらいなら、
わたしは自死を選びますよ」果敢にイリアスが答える。
「ではやってみなさい。死とは、そう簡単に得られるものではありません」
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クールラントの詩