ナターシャ再校
モマリサ公

記憶は夕暮れていく
真っ青に染まり
帰る場所って
これは祈り
12階のベランダから地上を見てる
ナターシャ
得体の知れないものが
あたし達の体の中にある
悪意
諦め

脂肪
執着
退屈で退屈な同じ日々が続く
俺たちははじめから狂ってるってわけじゃなくて
あたしたちは徐々に用意が整う
ぼくたちは段々に壊れていく
予測のつかない何かは予測がつかない
だから君たちは街をパトロールしてマップする
テロリスト
リストカット
過食嘔吐
オーバードーズ
みんなの輪郭が流れて暗い河になる
川の面をあかりがぶれている
ネオンとマンションがゆれる
マフィアのパパ
のかばんに子猫が入って
移民のママ
が空気をかきまわす
ハンディキャップのあにき
が食べ物をこぼしながら笑い
性転換者のぼくとシャブ中のおとうと
で街をマップする
ソープ嬢のアネキは
毛穴を全開にして高速道路をくぐり
徐行するタクシーを止め
街路樹を覆う空は生乾きで
肉色の暗い雲は膿みたいな雨を含み
いまにもおちていきそう
各駅停車を待つ身じろぎもしない人の群れ
俺たちははじめから狂ってるってわけじゃなくて
あたしたちは徐々に用意が整う
ぼくたちは段々に壊れていく
予測のつかない何かは予測がつかない
得体の知れないものが
あたし達の体の中にある
白いシャツが垂直にたれ
心臓のつぶれる音を聞く




自由詩 ナターシャ再校 Copyright モマリサ公 2022-11-27 14:56:54
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