戦士エイソスとエインスベル(六)
朧月夜

ここで言う堕落というのは、世間一般での堕落のことではない。
エインスベルを「魔の道へと貶める者」のように、
エイソスは、アイソニアの騎士のことを考えていたのである。
リグナロスと同じく、エイソスは、エインスベルを無垢なる者だと思っていた。

例え、それがエインスベルの実像とはかけ離れたものだったとしても、
彼らは信じていた。エインスベルは「正道」を歩むべき魔導士だと。
「ふふふ」と、エインスベルはふいに苦笑してみせる。
彼らが、一つの幻想を彼女の上に抱いていることを、直覚したのである。

「単刀直入に言おう、戦士エイソス。祭祀クーラスは、
 汝の妻クシュリーを誘拐しようと考えている。それは、ここにいる
 リグナロスからの情報だ。わたしは、これは確かだと考えている」
 
「我が妻を! いったいどこからそんな話が……にわかには信じられない」
「祭祀クーラスは策謀家なのだ。己の野心を実現させるためであれば、
 どんなことでもする。そして、常に第二第三の手を欠かさない」


自由詩 戦士エイソスとエインスベル(六) Copyright 朧月夜 2022-11-27 10:38:38
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クールラントの詩