遠い手
塔野夏子
遠い手が
わたしに触れている
触れているのにその手は
遠いままで
けれどその遠い手は
わたしに触れている
遠いままで
たしかに しずかに
遠い手の持ち主は
知らないだろう
遠い手として
いまわたしに触れていること
けれどそれでも
わたしに触れているこの手は
その遠さこそ
かぎりない慈しみで
しずかに たしかに
伝わる遠い温度は
不思議ななつかしさを
湛えて
思わせる
いつかわたしも遠い手として
誰かに触れる/触れた
ことがあると
自由詩
遠い手
Copyright
塔野夏子
2022-11-23 11:21:24