ふくよかな幽玄
あらい
三階の窓辺で釘付けにする
ひとつ
こころゆくまで
北側に向けた隔たりが囲っている
近隣都市の感覚より目と鼻の先の憧憬を
通りがかったほとりが覗いただけ
これが散歩がてらにちかく
並びより
家庭的開放感を落としている
いままさに命は洗われている
ネジを緩めたオルゴール
潮騒を喚ぶ唇は薄く開かれ
瞳から溢れた光が彼女と物語っていった
「おはよう」
トランク上の、
黒猫は欠伸をして
伸びをして
(残響が余白を孕む)
明日の外側にある誕生日は
峠
中ばにあって
――葬場にて。
あおいろをたくし上げた跡に
しゃれこうべがごろごろしている
貼り付けられた鉄塔、冷笑を游がす目印
せめぎ合う暗黙と劣等感。哀切と解熱
いくつかの山と谷を越える
やはり花は咲き乱れている
それでもそれでもこの夢は
リアルな感情を描写しながら
走り続けている
霧深い白夜を
ランプを灯して
シワの目立つ制服を着た姿と
目を凝らす
砂袋から溢れていた
幸福のようなものを
まばたき一つせずに 撓み・丸み