水の地をすぎて Ⅳ
木立 悟






鉄の雛鳥が川を分ける
岩の生きものが川を進む
彩雲が谷に落ちてゆく
雨の骨の門がひらかれる


どこまでも深く深く
突き刺さる雨音の上を
踏みながら飛びながら
歩みつづけ 歩みつづける


水の猫 水の犬が鳴き
集中する線 階段が生まれる日
広い水の前で 握りしめられる手
歌が歌に重なり 雨になってゆく


水はふたつ 人はひとつ
山間の夕暮れの村をゆくと
崖に建てられた神社から
幾つもの白い火花が落ちる


神社の真横にある滝を
火花は流れ落ちてゆく
水と村の間の荒れ野が
人の想いを拒んでいる


雨の径に 赤い文字が散り
膝の痛み 光またたき
まだらに染まる電信柱
灯の無い夜を照らしてゆく


絵と影がひとつになり
新たな生きものになってゆく
振り返れば雪の径
元に戻らぬ鈍の径


見えない店から外に出て
数歩のうちに季節は変わり
水は銀 銀は水
髪に衣に降りそそぐ



























自由詩 水の地をすぎて Ⅳ Copyright 木立 悟 2022-11-21 19:52:28
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