夢現
ひだかたけし

均衡が訪れる

肉の猛りは一時、収まり

わたしの眼は、
横たわる白い小部屋を凝視する

三次元の実在、余りに静かな

静止する時間の流れ

白壁に掛けられた
カンディンスキーの絵だけ
紫色に燃え立つ

次第にわたしという存在は
この環境の一部と化していき、

沈黙が浮き立つ
生きている沈黙

何処にも行く必要はない
此処にすべて在るのだと

銀の取っ手のドアが開く

氷を噛み砕き
生の実感を確かめ
突然の睡魔に襲われ

沈んでいきながら
揺蕩いなから

環境の一部から静か身を捩り

夢と現の境に生き始める

生と死が内包された宏大な世界の開け 

呑み込まれるぬるりとした舌の感触

あらゆる実体とあらゆる幻想が躍る


私は入っていく、目醒めた意識を携え

この宏大な界のザワメキに

今、此処から






自由詩 夢現 Copyright ひだかたけし 2022-11-17 21:21:37
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