夢現
ひだかたけし
均衡が訪れる
肉の猛りは一時、収まり
わたしの眼は、
横たわる白い小部屋を凝視する
三次元の実在、余りに静かな
静止する時間の流れ
白壁に掛けられた
カンディンスキーの絵だけ
紫色に燃え立つ
次第にわたしという存在は
この環境の一部と化していき、
沈黙が浮き立つ
生きている沈黙
何処にも行く必要はない
此処にすべて在るのだと
銀の取っ手のドアが開く
氷を噛み砕き
生の実感を確かめ
突然の睡魔に襲われ
沈んでいきながら
揺蕩いなから
環境の一部から静か身を捩り
夢と現の境に生き始める
生と死が内包された宏大な世界の開け
呑み込まれるぬるりとした舌の感触
あらゆる実体とあらゆる幻想が躍る
私は入っていく、目醒めた意識を携え
この宏大な界のザワメキに
今、此処から