此処に独りで
ひだかたけし

金星が見えたよ、
暮れゆく空の
透明な青に
輝き出で

それは確かな遠さの刻印だ




燭台の
蝋燭の炎は
ゆらゆら揺れて
聖書は漆黒の闇に
白い枠組みに包まれ現れ

小松さん、覚えていますか?
僕ら中学生が過ごした那須の夏休みを
みんながわらいみんながれんたいした
奇跡のように歌い跳ねる自由な瞬間!

父は荒れ果て
生は意味を失い
穴が空いた彼女の心

ハローハロー
私は感じる、
在るもの在るもの響き合い
生の時間に繋がり浮き立ち

なんで俺を産みやがったんだ!
親を呪い怒り叫ぶ兄、
弟は不思議がり
森に導いたあの兄ちゃんは
もう居ない




金星が見えたよ、
暮れゆく空の
透明な青に
輝き出で

それは確かな郷愁の刻印だ

僕はもう戻らない、
この独りの時に
苦痛と空虚と歓喜に留まり

僕はもう戻らない、
此処に静か佇み
此処で自らの外に出て

自らの深みを掘り進み
世界の響きに耳を澄まし

もどかしいおもいにかられながら、
懐かしい想いに包まれながら、












自由詩 此処に独りで Copyright ひだかたけし 2022-11-12 20:25:05
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