にせもの
やまうちあつし

なつかしい感じの家を見かけたので
インターフォンを押してみた
現れたのは見たことある顔
なんだ、わたしじゃないか
あちらはあちらで驚いたよう
とりあえずどうぞ、と
室内へ招かれた
リビングでは思い出話に花が咲く
寸分も違わぬ記憶
厄介なのは
いちいち感想が違うこと
嬉しかったと言うと
悲しかったと呟く
せいせいしたと話すと
未練たっぷりの様子
あまりに平行線なので
リビングは険悪な雰囲気
ちょうどそのとき
電話の着信がある
わたしのスマホと
あちらのイエデン
どうぞご遠慮なく、と
それぞれ同時に応答する
「いかにも
 わたしは
 わたしの
 にせもの」


自由詩 にせもの Copyright やまうちあつし 2022-11-09 15:41:36
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