妻の連れ子のカメの話
ダンテ カフカ ランボー
夜明け前にカメに食事をあげる。
かなり早いが、カメは早起きなので
起きる前にあげる。
小松菜の葉を3枚から5枚くらいあげる。
カメは陸ガメだから、植物の葉しか食べない。
カメの大きさは、縦20センチ、横15センチ、厚さ10センチ、体重
300グラムくらいだ。
食事をあげるとき、思いっきり、手と指に突進してくる。
噛むつもりだ。もう15年も食事をあげているのに、それでも
まだ、噛むつもりだ。
妻に言わせると、そこがいいんだと、言う。
あれは、愛かも知れないとも言う。
「ああ、そういうものか」と私は思う。
私には、カメを飼う趣味などないのだけど、朝が早いので
カメに食事をあげる係になった。
カメは、結婚のときに、妻が連れてきた。
なんで、カメなど飼ったんだと聞くと、白いヘビでも良かったんだけど、「なんかよっぽど辛かったみたい」と変なことを言う。
しかし、私も、意味は解るような気もする。
カメは水槽みたいな、ガラスケースで飼っている。前全面の扉が
開閉できるから、水槽ではない。縦70センチ、横50センチ、深さ50センチくらいの箱だ。
カメは恒温動物ではないので、暖かくする必要があって、赤い電球で温めている。
そういうことで、カメに食事をあげることが、私の任務だが
一向にカメは慣れない。飼い主の妻にも少しも慣れないそうだ。
カメは一年中ひとりでいる。
だけど、到底、寂しいと思っているとは思えない。
そこがカメのいいところだと妻は言う。
カメ飼いの奥深さは、いつまでたっても、敵意を丸出しに
向かってくるところだと、妻は言う。
そういうものだと思って、私は毎日夜明け前に、カメに
食事をあげている。
今では、カメを愛していて、とても可愛いと思っている。