「乾いたシグナル3」
ジム・プリマス

皆既月食の夜
月に影がさしてゆく
クラッシックのピアノ曲を聴きながら
だんだん暗くなる月から照射される
赤い光を身体と精神に浴びながら
俺はこれからどうしようか考える
後二年で還暦になる五十八歳の俺が
この日本滅亡という現実に
どう実体的に向き合っていくのか
海外でも評価が高い日本アニメ
「鬼滅の刃」や「スパイファミリー」が
うけるのは自分たち日本人が
失ってしまった家族や仲間といった
身近の共同体やそれに帰属していたいという
日本人の想いを表して叶えてくれるから
なのかも知れない
老いも、若きも、男も、女も、
個々がみんな孤立している
日本人が共同体を取り戻すためには
どうすればいのだろう
俺にできることは
とにかく身近な人と話すことだ
近所の人、社協の人、病院のワーカーさん
この日本の危機を伝えてゆくことだ
そんな風に想いを巡らしている間に
皆既月食は早々と終わり
あっという間に時は過ぎて
真夜中の月の青い光が煌々と
俺の住んでいる古臭い街を照らす
醒めた気分だが
久しぶりに瞑想をしてみようと想う


自由詩 「乾いたシグナル3」 Copyright ジム・プリマス 2022-11-09 00:37:33
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