脱出(九)
朧月夜
「虹の魔法石は、それを所持している者に対してのみ、
魔力を与えるということか。そして、それ以外の者の魔力は吸収してしまう」
たった今得た知識を、エインスベルはなんとか形にしようとしていた。
しかし、ここにあったような巨大な魔法石ならともかく……
(自分の得た虹の魔法石では、そんな広範囲な効果は得られないであろう。
せいぜい、魔法石同士の魔力を相殺するくらいだ」
エインスベルは首を傾げた。そして、再びヨランを見つめる。
「お前、何か隠していることがあるのではあるまいな?」
「滅相もございません。わたしがあなたに隠し事をするなどと……
もう何年来の付き合いでしょうか。どうか、わたしを信用してくださいませ」
「わたしはお前を信用する。しかし、お前自身も気づいていないことがあるのではないか?」
「わたし自身にも気づいていないこと? それは魔術の範疇に属することでございます。
わたしが今、この場でお答えできることではございません」
「それもそうだな。改めて礼を言う。ヨラン、よくやった」
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クールラントの詩