脱出(九)
朧月夜

「虹の魔法石は、それを所持している者に対してのみ、
 魔力を与えるということか。そして、それ以外の者の魔力は吸収してしまう」
たった今得た知識を、エインスベルはなんとか形にしようとしていた。
しかし、ここにあったような巨大な魔法石ならともかく……

(自分の得た虹の魔法石では、そんな広範囲な効果は得られないであろう。
 せいぜい、魔法石同士の魔力を相殺するくらいだ」
エインスベルは首を傾げた。そして、再びヨランを見つめる。
「お前、何か隠していることがあるのではあるまいな?」

「滅相もございません。わたしがあなたに隠し事をするなどと……
 もう何年来の付き合いでしょうか。どうか、わたしを信用してくださいませ」
「わたしはお前を信用する。しかし、お前自身も気づいていないことがあるのではないか?」

「わたし自身にも気づいていないこと? それは魔術の範疇に属することでございます。
 わたしが今、この場でお答えできることではございません」
「それもそうだな。改めて礼を言う。ヨラン、よくやった」


自由詩 脱出(九) Copyright 朧月夜 2022-11-08 17:38:24
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩