脱出(七)
朧月夜

「エインスベル。いや、事は俺たちがここを脱してからだな。
 しかし、エインスベル。祭祀クーラスの企みを許してはならぬ!
 奴は、再びライランテに戦争を起こそうとしているのだ!」
「アイソニアの騎士よ、あなたの心配は分かる……」

その時、エインスベルは憂いに満ちた表情を見せたが、
それは誰にも気づかれないものだった。ヨランすら、
アイソニアの騎士の怒気に気圧けおされ、それ以外のことに気を向けられないでいた。
「アイソニアの騎士よ、我らは、急ぎ向かおう、そなたの妻の元へ。

 クーラスがそなたの妻を拉するなど、あってはならぬことだ」
「当然だ! クーラスめ! この世に争いを生み出すだけでは物足らず、
 この世界を支配しようと考えたか! 今すぐこの手で殺してくれる!」

「ですが、エインスベル様。危機は戦士エイソスの家族へも向かっております。
 戦士エイソス様の妻はクシュリー・クリスティナ。彼女は、この世の救世主
 とも目されている方なのです。いったい、祭祀クーラスは何を考えているのか……」


自由詩 脱出(七) Copyright 朧月夜 2022-11-07 17:31:13
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クールラントの詩