脱出(二)
おぼろん

看守たちの血が迸る。ヨランは、顔を青ざめさせた。
リグナロスもまた、剣で監守たちに斬ってかかっている。
(わたしだけが、逃げるわけには……)ヨランは心のうちで思った。
しかし、看守たち向けて、エインスベルは魔法攻撃をしかける。

ヨーラ・テル、ヤザッカ・ハイト。エイスベルは攻撃魔法を駆使した。
(今はもう、この監獄の虹の魔法石はない。後は脱出するのみだ……)
エインスベルは、表情を変えずに呪文を打ち出していく。
ヤザッカ・ハイトの炎の矢が、看守の一人を焼いた。

(致し方あるまい。我は罪を背負う身、この期に及んで一人の生命など……)
エインスベルは、今は生き延びること、そして仲間の命を救うことに、
必死だった。それは、ライランテ戦争でアースランテの軍勢を屠っていた時にも似ている。

ヨラン、アイソニアの騎士、リグナロス──。エインスベルは、
彼らの命を救う、全うさせる責務を負っていたのである。(今、ここで我らが滅んでは……)
魔法と剣とによる戦いが続く。しかし、この場の戦いは長くは続かなかった。


自由詩 脱出(二) Copyright おぼろん 2022-11-05 07:35:38
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クールラントの詩