てのひら
soft_machine

小さなてのひらが
空にひらいた雲になる

口づさむ旋律は北からの
よせかえす波 あたたかい

文字と 文字のすき間に
浮かびあがる
何もことばを知らない
さみしい音符が鳴らされて
すこし 帰り道は
肌ざむく夕映え
足あともつられて そっと暮れる
幾つものまなざし
悲しみにつつまれ

視線の先で
つかみ損ねた きみが
誰かのなみだを かた代わって
どんなにこぼしても
受けつづけるんだって 笑った

山はふかくて
風ははやくて
点滅する
兎の目 町の入り組みに飾れるくらい
青い石としてより添い
首すじは いつも
戸惑ってもいるけど
開いたてのひら 口づさむ
韻律にとおい
何も知らない ことば全部
仕舞える 小箱

かわいた指のすき間から
降りくる 月光を
待ちのぞんだ渡り鳥には
たとえどんなに
小さくても 確かな
まるい雲がついてる

まるい雲がついてる



自由詩 てのひら Copyright soft_machine 2022-11-03 21:57:54
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