虹の魔法石(十)
朧月夜

エインスベルの言う通りだった。
虹の魔法石による結界と、その台座は揺らいでいるものの、
建物自体にはその破壊効果は及んでいないようだった。
(虹の魔法石とは、かくも強力なものなのか?)

ヨランは、一瞬怖気づいた。(しかし、今ではエインスベル様が、
 虹の魔法石そのものを所有している……。
 もしも、わたしがこんな魔術を使っていれば……)
虹の魔法石は、素人の手に負えるものではないと、ヨランは改めて思うのだった。

「結界に亀裂が入った。まもなく、この結界は消えるだろう」
エインスベルが言う。この地下空間で、静かな戦いが行われている。
それは、クーラスの策謀と、エインスベルの正義(それが正義と言っても良いならば)

の戦いだった。(しかし、結界が消えたとしても……
 エインスベル様はどうなさるのだろう?)と、ヨランは思った。
(破壊の先にあるもの……それは、自分たちの死ではないのか?)と。


自由詩 虹の魔法石(十) Copyright 朧月夜 2022-11-03 21:56:18
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クールラントの詩