1.5トンの遺留品
st

初冬の寒々とした
だだっ広い体育館にシートをしいて

その上に無造作に置かれた
約1.5トンもの遺留品たち

靴が256足衣類が258着
バッグが124点電子製品が156点

その他
キーホルダーや
ハロウィンのマスクなどなど


現場に残されていた
被害者たちの所持品は約800点

その動画の光景を見ていたら
思わず涙がこみ上げて来た

こんなものたちが
なぜ残されたのか


疑問を感じるようなものもあり
その凄まじさがよくわかる

ふつう
しっかりと紐で結ばれていた
スニーカーなんかが脱げるだろうか

また
帽子やバッグなら
簡単に外れるだろうが

ジッパーやボタンで
脱げにくいはずの
衣類の多さにも驚く

こんなに多くのものたちが
韓国の繁華街・梨泰院の
狭い坂道にあったなら

それだけで路面は
覆われてしまっていたに違いない

生々しい血や
土のついたものたちが
いかに凄惨な事態だったかを物語る

気を失って
道の真ん中で
倒れていたという女性が

洋服とバッグを見つけ

遺族らしき人たちが
涙ぐみながら
故人の遺留品を持ち帰る

しかしまだまだ
主や遺族の元に戻れずに
靴やバッグや洋服が

整理札をつけられたまま
空しくさびしそうに残されている

主の元に戻りたいと
泣き叫ぶ声が聞こえてきそうだ

主を知っているのは
遺留品たちだけ


犯罪捜査なんかだけでなく


DNA鑑定などを駆使して


はやく遺留品たちを


主や遺族の元に返してほしいものだ








自由詩 1.5トンの遺留品 Copyright st 2022-11-03 05:45:52
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