虹の魔法石(一)
おぼろん

エインスベルは壁を見つめながら、沈黙していた。
先ほどから、リグナロスがエインスベルのもとを訪ねてきていた。
「エインスベル様。助けはたしかに参ります。それまで、
 どうかご辛抱なさいますように……」

それが、いらぬお節介だと、エインスベルも心得ていた。
自分を助ける者などいない。自分はこの数日中に死刑に処されるのだと、
エインスベルは思っていたのである。(それも良い……)
このクールラントの行方など、彼女の感知する以外のことだった。

(祭祀クーラスは、再びこのライランテを戦争に導くのか?)
その母を、叔母の手から救って以降、エインスベルは達観していた。
(わたしのなすべきことは、すべてなした……)と。

しかし、その時、背後に人影が忍び寄るのを、エインスベルは感じた。
(ヨラン……。ヨランなのか? 前回奴に会ったのはいつの日だったか?)
エインスベルは、振り向いて目をこらした。──二人の人影が現れる。


自由詩 虹の魔法石(一) Copyright おぼろん 2022-10-31 17:10:18
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クールラントの詩