アースレジェへの帰還(九)
朧月夜

「ところでヨラン。今は何月の何日だ?」と、アイソニアの騎士。
「俺たちは、ハーレスケイドで長い時間を過ごした。
 エインスベルはもう処刑されているのではないか?」
「心配はございません。今は、リールの月の十日でございます」

「リールの月の十日? それでは、俺たちは過去へと帰ってきたのか?」
「いいえ、違います。ハーレスケイドで何日の時間を過ごそうと、
 何年の時間を過ごそうと、その他の世界では時間が経たないのです。
 今はきっと、エインスベル様が粛清される、三日前です」

「では、急がねばなるまい。ところで、ヨラン。
 今のお前に味方はいるのか?」アイソニアの騎士は朴訥に尋ねた。
「おります。先ほど言った、リグナロスという看守です。彼のところへ行きさえすれば……」

「分かった。すべてお前に任せよう。今は、このオスファハン邸の地下牢から、
 一刻も早く脱出すべきだ。武力の面ではなはだ心もとないが……」
「お任せくださいませ。アイソニアの騎士様。わたしは一流の盗賊なのですよ?」


自由詩 アースレジェへの帰還(九) Copyright 朧月夜 2022-10-31 17:09:32
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