アースレジェへの帰還(八)
朧月夜

「分かった、ヨランよ。お前はエインスベルを救えるのであろう?
 わたしは、そう出来なかった。今は……いや、言うまい。
 今回の遠征のこと、俺は誇りに思うぞ、盗賊ヨラン。
 お前は、龍族と交渉し、虹色の魔法石を手に入れたのだ。これで……」

「騎士様。わたしが交渉できたなどと、お思いになりませんように。
 いつかは、龍族がこのアースレジェに、攻め込んで来ることも
 ないとは言いきれないのです。ただ、今はエインスベル様の身を、
 どうかお案じくださいませ。わたしに出来ることとは、そればかりです」

「うむ。そうだな、そして、ここからはどうやって脱出する?」
アイソニアの騎士は、わずかに痛む右の手のひらを見つめながら、答えた。
ハーレスケイドから弾き飛ばされた瞬間、彼は右の手に怪我を負っていたのである。

「ご心配なさいますな。わたしは、ここに来るのは二度目でございます。
 この地下室からは、比較的容易に脱出することができるでしょう……
 あとはリグナロス殿が、監獄において準備を計ってくれていたら良いのですが」


自由詩 アースレジェへの帰還(八) Copyright 朧月夜 2022-10-30 16:21:57
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クールラントの詩