ひとめぼれ
ちぇりこ。

おててはクマさん
つめたいお水でお米研ぎ研ぎ
あ、あまり研いじゃうと
えいよう、が損なわれちゃうよ

「お父さん、ちょっと黙ってて」

はい
すみません

だって、お前の初めての、ご飯の用意、とても小さなキッチンの天使が降臨したようで、お父さん、跪いて、その、神聖な行為を、ただ、祈りの姿勢で、、、

「だから、少し静かにしてて」

はい
わかりました

今日のお米は「ひとめぼれ」
宮城生まれの美味しい子
ふっくらほっぺの艶やかな
白い湯気さん笑ってる
早く炊け炊け象印、、、

「うるさい!」

ごめんなさい

いつか成長したお前は、思い出すといい
大切な人と、幸せの白い湯気を挟んで見つめあう、その瞬間に思い出すといい
今日のことを、拙い手つきで、不器用な姿勢で、心を込めて用意した、この夕餉のことを、お父さんは、、、

「••••••あのね」

はい

いただきます



自由詩 ひとめぼれ Copyright ちぇりこ。 2022-10-28 22:50:02
notebook Home 戻る