キオク
ひだかたけし

雨の日に、陽に照らされ
ひたすら泳ぐおおうなばら
わたしはかなしみに
ひたされひたすら泳ぐ

割れ裂ける空、
行かないで逝かないで
君、私たちはただ戯れていただけ

冷え切ったからだに熱、やっと
よみがえりひびきあじわい拡がり

それは昔の夢、遥かとおい
暮れる暗がり浅間山に向かい
横並び互いに必死に石投げていた

その時、間に入っていた影は誰?

私たちは阿佐ヶ谷に住み毎朝
トーストを食べ手を繋ぎ歩いた
街道沿い寄り添い横並び
世界を時間を味方につけ
薄い膜に隔てられ

浮き立つ二足の靴は何処にイッタ?

揺れ動く大地を裂き
君よ貴女よ行け逝け
たましいの故郷へ




雨の日に、陽に照らされ
ひたすら泳ぐおおうなばら
わたしはいない
わたしはかなしみに
ひたされひたすら泳ぐ

なんて遠い日々だろう、
太古の太鼓、谺する

虚空の青を切って

たいこのたいこ、コダマする


雪降る宇宙は戦慄いて
雨に濡れる
私たちはひざまづき












自由詩 キオク Copyright ひだかたけし 2022-10-25 22:26:36
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