夜、神秘の手前で
ひだかたけし

太陽は沈み、白々と月
沈黙に弾丸は込められ
流れ落ちる滝に
犬の死骸が引っ掛かり

わたしは知らない
感じ取る在るもの
その鮮明な正体を
ただ打ちのめされ
ただ立ち尽くして

ひたすら共鳴し

タイムリーな夜の覚醒
現れあるモノあるモノ
それが強迫にならないよう
それが悪夢に変わらないよう
眼を閉じる、眼を開く
それら、すべて、この世界に
留まり沈黙の内に浮き立ち
神秘の手前、自らの輪郭保ち

響キ響キ 意味欠キ、
ただ在る ただ顕れ在る

)置き時計、静物と化し
)チクタクチクタク脈打つ
)静けさを抉り
)現に自らの位置を確保し

  *

沈黙に弾丸は込められ
白々と奥まる月
流れ落ちる滝に
犬の死骸の輝く牙
底に沈みながら凝視し

此処に凝集しただ独り在り












自由詩 夜、神秘の手前で Copyright ひだかたけし 2022-10-25 19:19:56
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