ある日
ひだかたけし
思考といういきものが
紅に染まる夜明けを迎える
*
ある日、
手を握っていてくれた白衣の人
わたしだけ、荒れ果てた末、
冷たい手術台に横たわり
傷だらけ血塗れに肉、痛み裂け
温め仄か確か熱に包み込み
手を握っていてくれた白衣の人
黒い弾丸が迫って来る夜に
黒い弾丸が切迫する夜更け
アナタは溢れる愛を注いで
手術台に登る太陽は既に穢れ
人は降り注ぐ慈愛の雨に濡れ
ある日、
肉体は生きて魂は死んで
とっくに息絶えた
タマシイ抱え生きて
あなたは、あなたは
この無常の世に未来に、震え怯え
蒼い岩峰に聳り立つ糸杉
過ぎゆく日々を白馬は走り抜け
こころのなかで鳴っている歌、
歌の底から現れ湧き出る思考
光、求め、闇に沈む、
どうしようもなく
闇に包まれ
かろうじて、
均衡し静まる 己
かろうじて、
束の間に開く 己
*
ある日、
思考というイキモノが
紅に染まる夜明けを迎える
心に鳴り響き続ける歌に溶け
わたしは、理念の一塊を掴み取る
わたしは 理念の言葉を 炙り出す