アイソニアの騎士とエランドル(八)
朧月夜
「策謀は、わたしの仕事ではなかった」
エランドルが、その過去を懐かしむかのような口調で言う。
「そして、今も策謀家ではない。わたしを導いているのは、
哀惜だ。人が人として生き、人として死ぬ。そのような思いを、
お前は思ったことがあるか? アイソニアの騎士よ」──試すような表情。
「俺は、常に人というものが何なのかを考えている。
それが人を殺し、人を生かす軍人の態度というものだ」
「なるほどな。お前は、貴族どもとは違っているな……」
「比べるまでもない。貴族どもは戦争を生み、民を弄んでいる。
俺は、一人の戦士として、それに立ち向かうのだ。平和への希求だ。
俺を突き動かしているのは……」アイソニアの騎士は、拳を握りしめる。
「ふふ。かつてはそうではなかったであろう? 騎士よ。
お前を今のような心へと導いたのは、エインスベルだ。
我が最愛のククリスの生まれ変わり。ヨースマルテ一の魔導士」
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クールラントの詩