アイソニアの騎士とエランドル(三)
朧月夜

アイソニアの騎士は、その出誕の経歴とは裏腹に、世界を感じる者だったのである。
オーマルに言われるものでもなく、彼は、歴史と世界の乖離を把握していた。
すなわち、理想がこの世界を導くものではないと。それだからこそ、
彼は戦いの日々に彼自身を投じてきたのである。

そこに答えはないと知りながら……。
エインスベルを救うための旅。この旅は、彼にとって一個の機会だった。
すなわち、己が宿命を定めから救い得る一助になるのではないかと……。
しかし、それははかない望みだった。世界とは、あくまでも残酷だったのである。

アイソニアの騎士は、オーマルのうつろな表情へと、目を向けた。
(こいつも、世界に踊らされる、単なる駒のようなものに過ぎないか……)と、
アイソニアの騎士は思うのだった。例えば、ここにいるヨラン。

彼を裏切ってしてでも、俺はエインスベルを救うと。そこには、
三者三様の思いがあり、それが彼らを引き裂くものでもあった。理想とは……、
常に現実を裏切っていくものではないのかと、そのことをアイソニアの騎士は自覚していた。


自由詩 アイソニアの騎士とエランドル(三) Copyright 朧月夜 2022-10-23 17:22:22
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クールラントの詩