クーゲンドルにて(十三)
朧月夜

「しかし、あなたはエイミノア様を殺しました」
ヨランも、少なからず怒りに駆られている。それまでヨランは、
ドラゴンたちが、これほどまでに高い知識を有しているとは、
考えていなかった。アイソニアの騎士と同じく、獣物だと思っていたのである。

人の命に勝るものなどない。人の命を奪うとは、倫理に反することだ。
しかし、このドラゴンたちに、そうした道理は通じないのであろうか。
今、ヨランはアイソニアの騎士と二人きりである。
果たして、エランドルに会って虹色の魔法石を手に入れられるのか、疑問だった。

「何をお望みなのです? ライディンゲル様。生贄ですか?」
「そうとも言える。オスファハンがかつてそうしたように」
……ここで初めて、ヨランはオスファハンの闇の面を見た。

オスファハン・ラ・フェイブルは、エインスベルの師匠である。
エインスベルが必ずしも善なる存在ではないように、そこには暗黒の心があっても
おかしくはなかった。しかし、ヨランはあくまでも希望を持っていたのである。


自由詩 クーゲンドルにて(十三) Copyright 朧月夜 2022-10-20 22:50:39
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クールラントの詩