猫じゃらし揺れている
ひだかたけし

無数、無数
猫じゃらし揺れている
街道脇の歩道の傍ら、
太陽は傾むき沈みかけ

  *

過ぎた一日の夕暮れ時、

子猫と息子と遊ぶのに
一本、二本、三本と
猫じゃらし摘んだ
深い森の入り口の
とある草むらの一ヵ所
斜光が茜に照らす
光のスポット
仄かに確かに広がって

過ぎた一日の夕暮れ時、

思わず動きを止め
立ち尽くし
ふとわき起こった
喪失されたふるさとの
あまりの懐かしさに涙した

  *

無数、無数の
猫じゃらし揺れる
街道脇の歩道の傍ら
太陽は傾き斜光のスポット
茜に染まり仄かに広がり
わたしの過ぎた一日一時
螺旋に渦巻き浮き上がる

  *

無数、無数の
猫じゃらし揺れる

今日、この一時この瞬間に、 

未知に歩む内なるフルサトを
未知に近づく内鳴るフルサトを
静かに確かに予感して
静かに確かに想起して

無数、無数の
猫じゃらし揺れる

今日、この一時この瞬間に

















自由詩 猫じゃらし揺れている Copyright ひだかたけし 2022-10-20 18:32:20
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