初秋のうた
ひだかたけし
この曇天の大気に
秋の甘やかな匂い
微妙に含まれ漂い
確かな秋という季節の現れが
わたしの意識を鮮明にする
用水路の土手沿いに
赤々と咲き並ぶ
彼岸花は未だ
見い出せず
街道の十字路脇に
生え広がる
大木の金木犀も
未だ咲かず
なのに、この大気に含まれた
秋の甘やかな匂いの漂流
それは天空が発散した
一つの大いなる祝福だ
わたしの意識はこの初秋に開かれ
わたしの意識はこの初秋に抱かれ
わたしはこころのなか、
戯れ遊ぶ
無垢な子供に還っていく
ああ、秋よ
郷愁の季節よ、
おまえに抱かれた
わたしの意識は
その深い懐に
震え、豊かに融合する