老人と幼子たち(改訂)
ひだかたけし
眼が在り映り凝視し続ける眼に
脳裏の戦場の消えない殺し合いか
眼前の草むらの裸の子供らの激しい絡み合いか
展開され焼き付けられるその光景
草むらの草いきれも
左足にぐるぐる巻かれた包帯の中で腐乱していく肉も
置き去りにして
虚空の孤立した氷塊に貼り付く老人の眼
ぐちゅぐちゅ舌を絡め合っている子らの裸体と既に死んだ魂の肉体
交錯し合いながら
その脳髄に一瞬燃え上がった黒炎に
)お前は何を見た?何をしていた?俺は見たぞ全て観た
凝視はしかしその強い発語にまで到達する力を得ずに、
突如の衰退虚脱
惚けて只虚ろに顔を強張らせ
その痩せこけ浮き出た頬骨コツンコツンと、
松葉杖に打ち付け燃え上がった黒炎の消失消すると
碧天に舞い上がる小悪魔の哄笑高らかに
)ただの頭のおかしいお爺さんだから大丈夫
裸の少女の宙に浮く声
少年は裸のまま
悪夢から逃れるような幼い性の快楽の醒めていく、
実在のナニカの残酷を知る