秋星より
本田憲嵩

交わされる会話と会話との狭間に
干からびた蜻蛉の羽を
玻璃のように砕く
緩慢で冷たい秋の風に舞いあがって
日めくりの暦はもはや作業的に剥がされてゆく
はいいろのため息を漏らすために
つくられたいつもの小部屋で
伝えるため紙に書きつづった最大限の未完成の言葉が
くしゃくしゃになって
くずかごから溢れだしている
そんなふうに
古い窓際で陽にさらされ頭髪の色素は抜け落ちてゆくようだ
夏のリップグロスのゼリーの味が思い出せない
今はただ落ち葉を見つめている


秋の地球の
そんな老いの星の重力だ



自由詩 秋星より Copyright 本田憲嵩 2022-10-11 01:32:34
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