切迫
ひだかたけし

棚引く雲のように
白く身を浮遊させ
何の企図も無く
この世界の旋律に
わたしは深く
包み込まれる

荒涼とした大地、
倒れゆく街並み、
闇の匿名性の襲来、

老いて生々しい
あなたの声が響く
毅然として独り
間近に迫る
死を見つめ

私たちは変容の途上、
私たちは歓びの最中、
私たちは終わりの受容、

鋭く突き刺さる刃物を
求め、私のゾシマ長老の
腐臭をひたすら嗅ぎ曝す

 君に僕は掴まえられないよ、
 君は僕に追い付けないよ、
 いつまで悪態を書き散らして、
 いつまで心の天涯孤独で居て、

馬鹿みたいにポカンと口開け
阿呆みたいに裸で街駆け抜け
立ち上がるshoutに惚れ込み
決意あと三年とかぎりを決め
限界マデいく明晰をたもって

最後に突き抜けた祝福待つ、

心臓が張り裂けそうになって
鼓動荒涼と世界に鳴り響いて






老いて生き生きした
あなたの声、
死の深淵を前にして

崇高な地球の円軌道に
線形時間を垂直に裂開する
この宏大な界の新たな次元、
交わり結び響かせて・ヒビカセテ

スベテ、手放し
スベテ、ホウテキし

失うものはもうなにもない、と
これ以上与えるものはない、と








*David Bowie『 Blackstar 』が響き鳴る中で


自由詩 切迫 Copyright ひだかたけし 2022-10-09 18:52:29
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