パーキンソンの法則という病
イオン

私だけの悩みではないと知ったとき
とても安堵したことを覚えている
時間ギリギリまで寝ているが遅刻はしない
期限ギリギリまでかかるが仕事は終わらせる
財布の中身は月末ギリギリで食いつなぐ
何ともならないなら開き直れるが
何とかなるから自己嫌悪に陥る
ブレーキの壊れた自転車みたいな自分を
ギリギリで操作していることに疲れていた

父親がパーキンソン病になってしまい
右手が震えて箸が持てなくなったので
左手で持とうと頑張っていた
ネットで私にできることはないかと
検索しているうちに
同じ名前だが違う学者が唱えた
パーキンソンの法則というのが出て来た

第一の法則は
「作業時間は使える時間一杯まで膨張する」
第二の法則は
「支出額は収入額に達するまで膨張する」
大きめの鞄を買ったはずなのに
いつも鞄はパンパンになっている
大きな冷蔵庫を買ったのに
いつも満杯になっているという事例は
まさに私そのものだった

プロジェクトがギリギリ間に合って
いつもより残業時間が多くなったので
来月はあの服が買えると思っていたら
打ち上げの飲み会になって散財した
そして法則になるくらいものには
打ち勝てないと開き直れて
やっと自由になれたのだ

それから私にとって人間は
死ぬギリギリまで目一杯生きるという
パーキンソンの法則が自然であって
余裕のあるほうが不自然なのだと思うと
自然体でいられるようになった
それが病だとしても一病息災
震えた指先で父親が示してくれたのだ


自由詩 パーキンソンの法則という病 Copyright イオン 2022-10-09 10:25:42
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