砂漠の行軍(十)
朧月夜
「あそこに虹の魔法石があるのだな!」アイソニアの騎士が勢い込んで言った。
「お待ちくださいませ、騎士様。突出されることは……」と、ヨラン。
「ふん。弁えている。戦いとは、味方あってあるものだ。
俺が、一人だけで千のドラゴンの群れに突き進んでいくと思うか?」
「思いません。ですが……」(さしあたっての作戦を考えなければなりますまい)
と、ヨランは考えるのだった。ヨランは、横目でオーマルを見やる。
そのオーマルは、平然とした顔をしていた。
この旅の行方はすでに決している──と言った顔である。
ヨランは、ふと心配になった。ぎりぎりの土壇場で、この女は我々を裏切るのではないか、と。
それくらい、オーマルの顔は他人行儀に見えたのである。その時、
オーマルが一つの言葉を発した。「あそこには、虹の魔法石はありません」
「なんだと! お前はさっき、クーゲンドルに虹の魔法石があると……」
最初に怒ったのは、エイミノアである。次いで、アイソニアの騎士が顔を赤くした。
「あそこであなた方が出会うのは、エランドル・エゴリス、その人です」
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クールラントの詩