近藤さんち
ひだかたけし
近藤さんちの広い庭の半分は
辺り一面緑の草原だった
君には僕がみえないの?
綺麗な君、
僕には君が見える、
僕には君が視える、
近藤さんちは鍛冶屋だった
溶けて黒ずんだ坪中の鉄塊
眠たげな高曇り
刻まれる朝の鼓動
僕はいったい誰なんだろう?
近藤さんちはいつも薄暗かった
のっぺり奥まる平屋だった
高曇りの空をスッポンポンで駆け抜ける
あれは、誰?あれは、君?あれは、僕?
それとも
*
肉、
年老いて 若やいで 色褪せて 艶めいて
陽が昇る、地平を染め抜き
時計の針は進み
今日もまた
今日も、また
起きては寝て、寝ては起き
俺は切り裂く、時間を
切り開き続ける、人生を
垂直に立つ、瞬間を
命、保ち続け
捉え深く感じ取る
肉の病に隷属せず
いかなる規範にも従わず
いかなる組織にも帰属せず
ただ内と外を繋ぐ直観を核に
この世界にこの今に、自由にひろびろ遊戯して
近藤さんちは今、誰も居ない
平屋のっぺり虚無、穿ち