近藤さんち
ひだかたけし

近藤さんちの広い庭の半分は
辺り一面緑の草原だった

 君には僕がみえないの?
 綺麗な君、
 僕には君が見える、
 僕には君が視える、

近藤さんちは鍛冶屋だった
溶けて黒ずんだ坪中の鉄塊

 眠たげな高曇り
 刻まれる朝の鼓動
 僕はいったい誰なんだろう?

近藤さんちはいつも薄暗かった
のっぺり奥まる平屋だった

 高曇りの空をスッポンポンで駆け抜ける
 あれは、誰?あれは、君?あれは、僕?

それとも

  *
肉、
年老いて 若やいで 色褪せて 艶めいて

陽が昇る、地平を染め抜き
時計の針は進み

今日もまた
今日も、また
起きては寝て、寝ては起き

俺は切り裂く、時間を
切り開き続ける、人生を

垂直に立つ、瞬間を
命、保ち続け
捉え深く感じ取る

肉の病に隷属せず
いかなる規範にも従わず
いかなる組織にも帰属せず
ただ内と外を繋ぐ直観を核に

この世界にこの今に、自由にひろびろ遊戯して






近藤さんちは今、誰も居ない
平屋のっぺり虚無、穿ち









自由詩 近藤さんち Copyright ひだかたけし 2022-10-07 17:16:05
notebook Home 戻る