夏の後ろ背を蹴る
ひだかたけし
土手の
草木が揺れている
熱い風が吹き
彼岸花はまだ咲かない
夏の後ろ背を追いやったはずの
秋が
今日一日、夏の再来に追いやられ
せめぎあい渦を巻く
木霊が
生来の不安と恐怖と孤独を抱えた
わたしの心に
残響する
綿毛が宙を舞う
光の宙を舞っている
次々と、次から次に
白々と透明に
何処から来たのか
白々と透明に
疼痛が始まり
帰りを急ぐ
わたしの身に
まとわりつく
*
ネットで詩の表現を
他者の読み手のあなたの
魂の面前に日々、曝す
ことが
なぜ、
趣味だの生き甲斐だの自己満足になるのか
自己完結し得るのか
私には 解らない
わたしは
表現という己の生身の生命の湧出を媒介として
表現という己の生身の剥き出しの魂のカタチを媒介として
他者の読み手のあなたの
たましいの深みにアクセスしたい
だけ
*
わたしは舗装された道ではなく
その脇に広がる密林のヌカルミを
歩く、旅する、進む
深く深く導かれるように、迷わないように
闇の工員に呑まれないように
瞑想ではなく直観的思考という
魂の深みをまず探索して
*
静けさが静かさが今の私を取り巻く
肉の苦痛の忍耐の最中に在って
静けさが静かさが私の底に沈んでいく
*
土手の草木は
熱い風に揺れ
彼岸花はまだ開かない
夏の後ろ背を追いやったはずの
秋は
何処へ
いったのだろう
*
今日という一日が混沌と渦を巻く
光をアナタを絶えず欲望し
わたしは
唐突に再来した
夏の後ろ背を思いっ切り蹴る