はじまりはいつもびぎん
妻咲邦香
心のようなものを失くした
裸になった
代わりに心になった
裸足になった
切なくなって
よろしくと言った
はじまりはいつもびぎん
じっとしていた
ヨーグルトになった
甘くなくて、懐かしかった
いつもの朝
さびしかった
離れようと決めた
はじまりがびぎんのままに
ぼろぼろとこぼれた
別の理由だった
すっくと立ったら
危なかった
いろいろまざった
優しかった
はじまりはびぎんだから
責任持った
お金もあった
だけどひたすら黙っていたら
痣になって
バッタになった
巡り会って
殴り合った
止まって、しばらく待ったら
見つかった
青い雨、赤い血
肉だった
森へと育った
しょっぱかった
かなりしょっぱかった
駆け抜けた
何も持たずに私は
道なき道、胸を弾ませ
会いに行った
私の代わりに
私のようなものを抱えて
置いていくと見せかけて
一緒に連れて行く
はじまりは、いつも、びぎん