奇跡
静
茜色の煉瓦の校舎のドアが開く
貴女がその向こうにいるのが分かる
貴女もドアを透かして認知してる
「ああ、いるね」「久しぶり」
何も謂わなくとも全てを理解している
世界の終わりで貴女を抱いた
二人だけの空間、二人だけの時代
共に生きられぬと分かっていても
泥の沼で溶け合った
帷の中で永遠の幻をみながら
その後、世界が失くなって
悪い夢のエンドロールの中にいる
泣けない魂が震えることはなく
生きる絶望にも慣れ
何喰わぬ顔で作り笑いをする
凍てついた大地を離れたとしても
心の冷たさを溶かしたくて名前を呟く
永久に消えぬ傷はあれども
幸せを願っている
貴女の行方をただ願っている