奇跡

茜色の煉瓦の校舎のドアが開く

貴女がその向こうにいるのが分かる

貴女もドアを透かして認知してる

「ああ、いるね」「久しぶり」

何も謂わなくとも全てを理解している


世界の終わりで貴女を抱いた

二人だけの空間、二人だけの時代

共に生きられぬと分かっていても

泥の沼で溶け合った

帷の中で永遠の幻をみながら


その後、世界が失くなって

悪い夢のエンドロールの中にいる

泣けない魂が震えることはなく

生きる絶望にも慣れ

何喰わぬ顔で作り笑いをする


凍てついた大地を離れたとしても

心の冷たさを溶かしたくて名前を呟く

永久に消えぬ傷はあれども

幸せを願っている

貴女の行方をただ願っている


自由詩 奇跡 Copyright  2022-09-15 22:17:59
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