九月の夏の熱風
ひだかたけし


僕はもしかしたら
天空に輝く太陽だったかもしれない
僕はもしかしたら
通りを吹き抜ける風だったかもしれない
僕はもしかしたら
男ではなく女だったかもしれない

そう考えたらとても気が楽になった
そう感じたらとても心が開かれた

俺はもしかしたら
都市を破壊し尽くす地震だったかもしれない
俺はもしかしたら
野望のために人々を虐殺する独裁者だったかもしれない
俺はもしかしたら
悪夢に出てきた闇の工員だったかもしれない

そう考えたら酷く恐ろしくなった
そう感じたら吐きそうになった

あらゆる力動が存在が
私というひとりの人間のなかで
蠢き響き躍る

ぼくはもしかしたらあなただった
おれはもしかしたらおまえだった

この果てない宇宙から生まれ
人は孤独だ
この果てない宇宙に属し
人は同じだ

  *

今、熱風が吹き付ける
病んだ私の肉体を
沸き立つ私の魂を

九月の夏の熱風が
私というひとつの存在を
優しく激しく包み込む












自由詩 九月の夏の熱風 Copyright ひだかたけし 2022-09-14 19:06:45
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