夜の破片
秋葉竹



あれからもう泣かないと
決めたのが冬の夜の風が強く吹く公園で
決めたのにもう一度だけ泣きそうで
君のことなんか知らないままで
生きていきたかったと云ったりして

初めての悲しみを
君に教わったり
初めての熱量で
君を欲しがったり
冬がくるまえの
緑の薫りのする温かめな声が
僕の耳の奥深くをくすぐったから

それよりも遠い希望の記憶を
忘れてしまわなければならなかったのか
僕の小さな胸の蜜の傷を
忘れてしまわなければならなかったのか


もう終わりだと知っていても
冬はいつも同じ鮮やかさで
冷たいさよならや痛い悲しみを
まるで夜の破片みたいに
キラキラとキラキラと
降りそそいでくれるから
けっきょくは一度も
君にも云わなかったけれど
ほんとうは君に出逢えて良かった

ほんとうはありがとうと云いたかった

ほんとうにありがとうと云いたかった
















自由詩 夜の破片 Copyright 秋葉竹 2022-09-13 20:32:58
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