ハーレスケイドでの戦い(九)
朧月夜
「ヨラン、お前?」と、アイソニアの騎士は叫んだ。
「騎士様。……その疑念よりも先に、お答えを述べさせていただきますね。
わたしは、魔導士ではありません。ですから、先ほど放ったのも魔術ではないのです。
すべては、この本がなすこと……」そして、一冊の手書きの本を指し示す。
「うむ? 能書きなど良い。問題は、お前が役に立つかどうかだ!」
「わたくしは、あなた様のお役に立てます。約束しましょう」
そう会話している間にも、空が裂け、天から幾条もの光が降り注いでくる。
それが、エビ・グレイムの百の目を焼き、大地にその残骸を降り注がせる。
「ギャオウ!」と、エビ・グレイムが大声を上げた。その叫喚にかき乱された者は、
幸いなことに今はいなかった。ビギナーズ・ラックと言えば、言えたであろう。
ヨランたち一行は、エビ・グレイムの本当の恐ろしさを知らないままに、これを倒していたのである。
「おい、盗賊……。現状を報告しろ。かの敵は去ったのか? それとも、死んだのか?」
「死んだのでございます、騎士様。わたしも、そのことに恐ろしい思いをしております……」
ヨランは震えながら言った。それに対して、戸惑うアイソニアの騎士。
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クールラントの詩