Let's roll
ホロウ・シカエルボク


あの、もと運動部特有の、「皆で同じ方を向いて同じように頑張る」みたいな考え方あるじゃない、いや考え方っていうかもうただのクセみたいな感じなんだと思うんだけど、もう思考の領域じゃないようなさ、ああいうのあるじゃない、チームグセとでも言うか、ともかく俺、ああいうの、大ッ嫌いなんだよね、そもそもなんでお前ら主体でもの言うんだよって思うじゃない、そんで、考え方の相違とか、そういうものを絶対に容認しないでしょ、ああいう人たちって…いつまで部活気分で居るんだよとか思っちゃうよね、一生運動場でローラー引いてろよって思うんだけどさ、なんかこう、視野が狭いというかさ、「木を見て森を見ず」みたいなところあるじゃない、そんでさ、「木だけ見とけば問題ない」みたいな落とし方するでしょ、ほぼ全員、無意識だろうけど、もう、言い方あれだけどアホだよね、その、違うワクの人間からしてみたらほんと迷惑でしかないわけよ、「いや、俺がお前に合わせる道理ねえだろ」って―それ当然じゃん?冗談じゃないよってなるよね、でもね、誰でもそうなるよね?いやまあ、洗脳気質の人とかだったらノープロブレムなのかもしれないけどさ、なにがノープロブレムだよ、大問題じゃねえかよ、まあそんなことはいいとして、あのー、我を通すことしか頭にないでしょ、そんで、ついてくるやつだけ友達みたいなさ、なんか、根性と強気だけで人生渡れると思ってる馬鹿、あ、馬鹿って言っちゃった、言っちゃったけどまあいいか、狭いっていうか浅い?で、難しい話出来ないからわざと全部浅いところでカタつけるわけよ、一番楽な落としどころで済ませるの、で、それ絶対更新されないの、CDで言ったらRなのよ、RWじゃないの、上書きとか出来ないのよ、一回書き込んだら終わりっていうね、で、なんか多いよね、そういう人、いやまあ、単に俺の生活レベルの問題なのかもしれんけどさ、多いんだよね、どうしてそんな感じで何十年も生きられるのよって思うんだけどさ、びっくりするくらい多いんだよね、だからこう…例えばこう、隣町行っても同じ人に会ってるような気がするとき、あるもんね、(あ、これあんときのあいつと同じ感じだな)ってなるわけ、性格からワードセンスの幼さからまで、もうほぼ同じ、あれだよね、もうシンプル過ぎてさ、全然差ってもんがないわけ、一番簡単なところでしか生きてないからさ―シンプル・イズ・ベストって言葉あるじゃない?あれ、決して単純サイコーっていう意味じゃないからね、そもそもシンプルってなによ、って話じゃん、それはわかりやすさとかってことじゃないからね、無数の選択肢を行ったり来たりしてようやく見つけたライン上で起こる現象が素晴らしいっていう、そういう意味ですから…だから、なんていうの、ただ簡単に言やいいってもんじゃないっての、ある意味さ、模索とか挑戦とかってシンプルに行き着くための試練なんだと思うのよ、人間はシンプルになりたくてより深層に手を伸ばすわけ、それは間違いない、ちょっと話がそれたけど、もうね、どいつもこいつもビックリするくらい同じことしか言わないよ、あれよ、最近のJ―POPみたいな感じよ、「お前それ言っときゃいいと思ってるだろう」みたいなさ―あれ思ってんだよね、実際、信じられないことだけど本当に本気でそう思ってるんだよ、だからさ、そういう論調のものが売れるっていうのはさ、そういうもので良い受け手がたくさん居るってことだからさ、さもありなんって感じだよね、あれ、本当に…人間ってね、無駄を許容出来ないとどんどん構成が簡略化されていくから、ごくごく簡単な日常だけを生きてる人って本当にそれに必要な能力しかなくなるの、あとはもう制限されて、錆びついて二度と動かなくなるセクションっていうのが絶対出来るのよ、これね、俺、別に変な選民思想とか、そういうものでハイになって喋ってるわけじゃないのよ、俺の育った街っていうのはね、本当にそういう―もう退化って言っちゃうけどさ―そういう思考的退化を何世代も何世代も繰り返して続いてきた田舎街でさ、見た目こそ街になったけど思想は村っていう、村社会そのものっていうところなわけ、で、もう俺として小さなころからそんな大人たちが本当に奇異な生きものに見えてしかたなかったのよ、これはとんでもなく怖ろしいものだぞ、って、子供心に感じながら育ってきたわけ、そしてね、中学に入ったころに、もうはっきり全部見えちまったのよ、(ああ、ここだ、ここから社会が始まるんだ)っていう瞬間がはっきりとあったの、そして自分は、一生そういうものに背を向けて生きていくんだろうって…十四歳なんだよ、十四歳で終わる、って、そんな漫画昔あったけどさ、ある意味で社会っていうのは、十四歳で固定された人間たちの為にあるものなんだよね、思想も、思考も、挑戦も模索もない人間たちの為の松葉杖なんだって、そしてそれは間違いじゃなかったね、あれからもう何十年も経ったけれど、自分の言葉を持たない人間たちはやっぱり愚かしくて見苦しい…そして途方もなく哀れだ、自分を疑うことを知らずに老いて死んでいくことほど哀れなものは他にないだろう…もう残り時間が徐々に少なくなっているだろう俺の人生は、もしかしたらそんな偉そうに語れるようなものではないかもしれないけれど、俺は決してあの、一見ラクそうな怖ろしい世界に一度も足を踏み入れはしなかった、そんな誇りの中でそれなりに成就するだろうという気はしているよ、とにかくきちんとした視線を持つことだ、自分が生きるための目じゃない、確かにそこにあるものを見つめるための目を持つことだよ、そうじゃなきゃ始まる前に終わっちまうぜ、あたりを見渡してごらんよ、お手本なんか冷蔵庫の裏のチャバネくらいウヨウヨしてるからさ…。



自由詩 Let's roll Copyright ホロウ・シカエルボク 2022-09-06 23:19:54
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