幻想の庭
ひだかたけし
幻想の庭に咲く
赤々と艶やかな大輪の花を
呪い殺すように千切って
淡い光跡を残し貴女は沈む
深く澄んだ泉の底へ
湧き出る清水はこんこんと
幻想の庭を打ち壊し
なにが訪れたのだろうか
なにが到来したのだろうか
未だ虚ろなわたしの意識に
夜明けを告げる鐘が鳴る
無と有の狭間に横たわり
人は深い夢からの覚醒を望む
移ろいゆく世界、確実に刻まれる時
衰弱は突然やって来る
その時、君は
澄んだ泉の
渦巻く深淵を観る
幻想の庭に赤々と咲く大輪の花
千切り去るのは誰だったか
軽やかに柔らかく響く声は
神々の痕跡を刻印し
この世界の内へ呑まれていく
高まり鳴る夜明けの鐘、込み上げ湧出する予感の水脈