人よ、人よ
ひだかたけし

静かな朝だ、秋風吹く
走り過ぎる車の影が
澄んだ青空に映り透けていく
私の肉は相変わらず痛み
浮き立つ意識を押し留める

人よ、人よ、何処にゆく
時間は世界は
こんなにくっきり今此処に蕩け
何の目的も意味もなく
内から溢れだすものを在らしめているのに
次々歓び哀しんで
破壊しては在らしめているのに
君は今日も、感覚の表層を撫でていくだけなのか
君は今日も、忙しく義務に従うだけなのか
君は今日も、与えられた責務を背負うだけなのか
(僕はもう、とっくの昔に壊されちまった)

静かな朝だ、秋風吹く
澄んだ青空は肉を溶かし
痛みの視界に明晰な
新たな意識の次元を開く





自由詩 人よ、人よ Copyright ひだかたけし 2022-09-05 11:40:26
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