朱天黒
あらい

朱天黒の篝火が爆ぜる

目眩の中で炙られる白昼夢の散弾を集めた
贄に均しい極熱、滾るような炎天のまばたき
吐出を嵌めた雪月花を、身に埋めたような心地で

のぼせ上がる四季を撫でてしまえない
過呼吸の入道雲から、むわついた体に粘り

帆織り込まれた虹の、滾るようなシャボンを見た
なんどもぬくもりを与える警報の空のくせに
ほったからしな海水浴場に、束縛のない蝉が啼く

重苦しい夕立に、
曇天と熱波が灰を降らせては
拝をあたえるなら、
その肺で思いのまま羽根を貶して

重しを外しなさい、

風鈴はどこまでも叫びの夢を与え
寒々しく網に絡まれた、
蝶蛾の姿を、蚊帳の外で眺める

あんたはもうすでに首を刈られた向日葵でしょうと

麦わら帽子は知ってるの、
夏枯れに纏い点かれたその日を。
その陽よ、
苑秘は何処に向かい合わせば、
出会えるのか
祖の碑にたどり着くのか、

今だ、未だに、割れるように

けたたましい傷口が、跡を惹くような、指を這わせる
覚束ない胸騒ぎを抱いた、色褪せぬ夏を切り取るだけで


自由詩 朱天黒 Copyright あらい 2022-09-04 19:20:27
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