薄明の中で(十七)
おぼろん

「別のこと? 一体それは何でありましょうか?」フランキスは強張りながら言った。
祭祀クーラスは、今では為政者の顔として、面持ちを崩さないでいる。
「お前には、ある種の間者のような役割を果たしてもらいたい。
 戦士エイソスに取り入り、その心を意のままに操ってほしいのだ」

「エイソスに……。彼は、今ではこの国の聖騎士の一人です。
 わたしとは対等な立場におります。それを、その心を操れとは……」
「事はそう難しくはない。汝には、彼を、エイソスを説得してもらいたいのだ」
「では、いかなる方法を用いれば良いとお考えですか?」

「彼の妻、クシュリー・クリスティナを捕えてもらいたい」
「なぜ、殺すのではないのですか?」真意が分からない、という調子でフランキスは問うた。
「ふむ。わたしも迷った。しかし、あの女には、これからもなしてもらわなければいけないことがある」

「了解しました。それで、エイソスには何を伝えれば良いのでしょうか?」
「お前はただ、クシュリーを誘拐すれば良い。アイソニアの騎士、その婚約者についても、
 これを攫う手順は整えている。お前は、ただわたしの命に従えば良い」


自由詩 薄明の中で(十七) Copyright おぼろん 2022-09-04 02:52:00
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クールラントの詩